古 色 塗 り
1.古色塗りについて
古色塗りとは、塗料・塗剤・顔料などを配合し、取替え材及び新補材又は埋木などに塗布して、
①木材の保護や、②周囲との調和を図る塗装である。
古色塗りは、塗料の選定や色合い、濃淡の調子をみるために、見本板に塗ってみるという試し塗りが必要であり、監督員の承認を経てから施工する。塗布は組立前に行う事を原則とし、塗り面の見え掛り部はもちろん、隠れ部、側面、背面まで行う。
仮設材・補強材の塗りは、周囲とは区別したい。
内部廻り:アンバー粉をベースに煮立てた「ケズリ墨」・「墨液」の黒、「朱墨」・「弁柄」の赤等で色調を整える。乾燥後、ウエス・ぬか袋で摺り込む。その後、柿渋で上塗りをすれば少々の艶が出る。この他色調によって塗剤を選ぶ。
外部廻り:キシラデコールを中心にアンバー粉等を混入して色調を整える。塗装後、ボイル油・テレピン油・荏油等で上塗りを加え、乾燥後、ウエス・ぬか袋で摺り込む。
以上は代表的技法であるが、各事例によって千差万別の技法があり、その都度検討・試し塗りを行なう必要がある。
2.古色塗りの材料
名 称 | 特 徴 |
キシラデコール | 屋外木部用(防腐・防虫・防カビ)退候性塗料 |
水性キシラデコール | 水性内装木部用ステイン(防腐・防虫・防カビの成分はない) |
バトン | 外部・内部木工建材保護着色材(低臭溶剤型カラーステイン)シックハウス対応型塗料 |
ノンロット | 屋外用(油性)木材保護含浸塗料 耐UV 超撥水 防腐 |
アンバー粉 |
天然鉱物で精製されており、天然酸化鉄の*顔料。赤口・黄口・黒口とある。金属の器に溶かして放置しておくと器を腐食する。無毒で日差しに耐える粉。 |
弁柄 | ベンガラ(インドのBengal産)黄土を焼いて作った粉状の赤色顔料。日本では岡山県高梁で産出する。 |
ケズリ墨 | 固形の小片墨 |
油煙・松煙 | 油、樹脂などを不完全燃焼させる際に生ずる炭素の微細な粉 |
ボイル油 | 乾性油。調合ペイントうすめ液。第3種有機溶剤 |
テレピン油 | 松・杉などの樹脂から採った揮発性の精油 |
荏油 | 木材内装用天然植物油(ゴマ油) |
ヒバ油 | ヒバの材部を水蒸気蒸留して得られる精油。抗菌・防腐防虫・消臭脱臭・精神安定効果がある。 |
.
*顔料……水や油・溶剤に溶けず一定の色に着色する物質。塗料・化粧品の主原料
3.防蟻処理について
A)木部 薬剤・・・キシラモンTHクリア
工法・・・浸漬・塗布・吹付等部材の要求度に応じて施工。浸漬はプール内で24時間以上、塗布・吹付は2回以上とし、木材面積1㎡当り1回の量200ml以上で施工する。
施工範囲は床上より天井までを除く全面。即ち床組・小屋組の全面。屋根は野地板・野地竹組後、壁は小舞掻後に散布する。なお損傷の著しかった部位には処理剤の注入を併用する。
B)土壌 薬剤・・・有機リン系薬剤・ネオニコチノイド系薬剤
VEL CP40EC(日本シロアリ対策協会認定)
ベクトップMC乳剤(有恒薬品工業㈱)
クロルビリック20FL乳剤(シントウファイン㈱)
オプティガードZT(シンジェンタジャパン㈱)※(公財)文化財虫菌害研究所認定
工法・・・散布処理で1㎡当り2ℓ~5ℓ以上の希釈液剤を散布。三和土の場所ではタタキを行なう前に施工。
4.油障子の試作
古来より戸口障子や外部に面した建具に見られた油障子は和紙(コウゾ・ミツマタ)に植物油を塗り、紙質を強化するものである。現在、当事務所に於いて試作し、その変遷・経過を追跡中である。